NADA HOLDINGS
台湾の資本市場において、アニメ、ゲーム、VTuber(バーチャルYouTuber)産業に注力する智宝国際が、公開発行と新規上場を予定しています。台湾の従来のアニメやゲーム関連企業が代理業務やコンテンツ配信に注力していたのに対し、智宝国際は創立当初から知的財産権(IP)の開発と管理を重視し、日本のアニメ制作委員会に積極的に参加し、IPの主導権を確保しています。その結果、グローバル市場へと展開し、台湾企業がこれまで主に関わっていた産業の限られた範囲にとどまらず新たな展開を進めています。
逆境を乗り越えて:コンテンツ制作からIPの収益化までの完全エコシステム
智宝国際は2015年に設立され、アニメ、ゲーム、VTuberなどの二次元関連分野に広がりを見せ、IPの運営に関するワンストップモデルを構築しました。会社は、少年向け小説やマンガの原作発掘から始まり、アニメやゲームの改編を経て世界市場に発行、その後は台湾市場に引き入れる形で展開し、商品ライセンスやイベント開催など多角的なアプローチをしています。このようなモデルによりリスクを低減しIPの価値を最大化するとともに、安定したライセンス収益を確保しています。
他の台湾のアニメ、マンガ、ゲーム関連企業との最大の違いは、智宝国際がIP(知的財産権)の開発に参加するだけでなく、積極的にアニメ制作委員会に関わり自ら主導権を確保している点です。総経理の許利瑋氏は、IPの主導権を持つことが、不動産を所有し続けるのと同じように安定した収益を得られることだと指摘しています。これにより、ライセンス提供者の意思決定に依存せず市場の変化に柔軟に対応し、戦略を迅速に調整できるというメリットがあります。また、映画やテレビ番組の権利販売、関連商品やグッズの開発、他業界とのコラボレーションなど、さまざまな方法で収益を上げています。
日本市場への進出:パートナーシップから製作委員会の設立へ
日本市場での信頼を得ることは容易ではありません。日本のアニメ業界は一般的に「制作委員会」制度を採用しており、IP開発のリスクを複数の企業で分担しています。これらの企業は、資金や産業資源を提供し、IPの商業的寿命を延ばす役割を担っています。許利瑋氏によると、智宝国際は初めて日本市場に参入した際、東京テレビとの協力を通じて2015年に台湾のアニメ「軒轅剣・蒼之曜」の制作委員会を設立しました。その後信頼を築き、数年にわたり経験を積んだ結果、最終的には台湾で唯一制作委員会を組織できる企業となりました。
マーケティング責任者の洪佳吟氏は、制作委員会の管理者がメンバーの貢献度を評価する際、資金提供だけでなく、アニメの配信、ゲーム開発、さらには異業種とのコラボレーションなど、さまざまなリソースを提供できる能力が重要だと説明しています。現在、智宝国際は日本市場のトップ企業と提携し、より高品質なIPを獲得することで収益成長を加速させています。
資本市場の新勢力:企業投資とIP戦略の拡大
智宝国際の成功は、大手企業の投資を引き寄せました。たとえば、台湾大哥大は2021年に最大の株主として投資し、智宝国際が日本市場での経験を生かしてさらなるIP関連業務を発展させることを期待しています。さらに智宝国際は、グリーンワールドホテル、また、テクノロジーや製造業界に関連のある能率や金可、威剛などの企業からも資金提供を受け、IP開発と商業化の戦略を加速させています。
資金が整った後、智宝は事業の一貫化を通じて業務を強化し、IP権利の代理および発行を行う台湾の企業「回帰線娛樂」を設立しました。また台湾文化内容策進院との共同出資で「翔英融創」を設立し、台湾の本土IPを専門に開発しています。一方で、智宝国際は事業の多角化戦略を採り、アニメIPをゲーム開発やVTuberの運営などさまざまな分野に広げて、IPの収益ポテンシャルを最大化しています。
資本市場へ進出し、台湾のアニメ、コミック、ゲーム(ACG)業界の新しいモデルを築く
現在、智宝国際は創業から10年の節目を迎え、資本市場に進出することを決定しました。この進出は資金調達のみならず、IP投資の規模を拡大し、アニメやゲームプロジェクトをさらに推進するためのものです。
総経理の許利瑋氏は、質の高いIPを育てるには長期的な努力と多大な資金が必要であり、上場することで事業の拡大を柔軟に行い、より多くのパートナーシップを築くことができ、結果としてアニメやゲーム業界での競争力を一層強化できると強調しています。
未来に向けて、智宝国際は台湾初の「アニメ・ゲーム関連株」となることを目指すだけでなく、自社のIPを管理し、台湾のアニメ・ゲーム産業が世界市場での地位を確立することを目指しています。市場規模が拡大し続ける中、智宝国際の成長可能性は注目を集めており、台湾のアニメ・ゲーム業界に新たな可能性をもたらすことが期待されています。

引用元:遠見雑誌
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